遺言書で相続人廃除

遺言書は、人生の最終章を自分らしく締めくくるための大切な手段です。中でも「相続人の廃除」は、非常にデリケートかつ法的に厳格な制度です。この記事では、廃除の意味、要件、そして遺言書による廃除の方法について解説いたします。

相続人廃除とは

相続人廃除とは、法律上の相続人(主に推定相続人)から、相続権そのものを剥奪する制度です。民法第892条に基づき、以下のような事情がある場合に認められます。

相続人廃除の主な理由

  • 被相続人に対する虐待
  • 著しい侮辱
  • その他の重大な非行

これらは「客観的事実」として証明される必要があり、単なる不仲や感情的な対立では認められません。

遺言書による廃除の流れ

相続人廃除は、家庭裁判所の審判を経て初めて効力を持ちます。遺言書で廃除を行う場合、以下の流れになります。

  1. 公正証書遺言または自筆証書遺言にて廃除の意思を明記
    • 例:「長男〇〇は、私に対して度重なる暴力を振るったため、相続人として廃除する」
  2. 遺言執行者の指定(または家庭裁判所による選任)
  3. 遺言執行者が家庭裁判所に廃除の審判を申し立てる
  4. 審判が確定すれば、廃除が成立し、相続権を失う

※遺言書に廃除の意思があっても、審判がなければ効力は発生しません。

審判確定後10日以内に戸籍への記載届け出

相続人廃除の審判確定後10日以内に、裁判謄本を添えて市区町村役場へ届出を行う必要があります。戸籍への記載手続きは法的効力を確定させる最後のステップです。期限や書式に注意し、確実に届出を行うことが重要です。

注意事項(代襲相続)

廃除の効力は本人に限られるため、子や孫には自動的に及びません。

代襲相続を防ぎたい場合は、代襲相続人に対しても個別に廃除の審判を申し立てる必要があります

ただし、代襲相続人(孫など)に対しても虐待や重大な非行などの要件が必要です。単に「親が廃除されたから」という理由だけでは廃除できません。